普段から気をつけたいこと
予防が困難な乳がん。だからこそ早期発見が大切です。
最近の日本での乳がん罹患数(新たに乳がんと診断される数)は、年々増えており、ここ30年あまりで5倍に増加し、年間に女性がかかる全てのがんの中で1位となって5万人を超えています。 毎年およそ1万人以上の方が、乳がんで亡くなっています。しかも、生涯のうちに乳がんにかかる人は以前は20人に1人と言われてきましたが、最新のデータでは16人に1人となって更に増えています。
一方、乳がんによる死亡は、増加は比較的緩やかで4~5人に1人と低く抑えられています。
これは、①検診による早期発見、②効果的な新薬の使用、③乳がんのタイプ別治療法の確立などで予後が改善されたことが考えられます。
乳がんの年齢分布は、20代後半から徐々に増え始め、閉経前後の45~49歳でピークとなっています。
食事をはじめとした欧米化された現代人のライフスタイルが大きな原因として考えられるため、予防することが難しく、患者の数は今後さらに増加すると予想されています。
ただ幸いなことに、乳がんはからだの表面近くにできるため、比較的自分で発見しやすいがんです。
早い段階で乳がんを発見することができれば、乳房を失うことなく、小さな手術で治療することも可能となっています。
乳がんはすべての女性がかかる危険性のある病気です。
予防が難しいといわれる乳がんですが、乳がんにかかりやすい条件を知っていれば万一の時に見落としてしまうこともなく早期発見に繋がります。
乳がんにかかりやすい条件
- 親姉妹などの近親者に乳がんにかかった人がいる
- 出産経験がない、あるいは30歳前に出産を経験していない
- 初潮が早く、閉経が遅い人
- 肥満の人(特に閉経後)
- 良性の乳腺疾患になったことがある
- 授乳期間が短い
- 肉食に偏った食生活
etc...
これらにあてはまる人は、そうでない人に比べて少しだけ乳がんになる可能性が高いというだけのこと。 みなさんに忘れずにいただきたいのは女性であれば、誰でも乳がんにかかる危険はあるということです。
常日頃から自分の乳房を観察し、乳房に起こりつつある変化を、見落とさないように、気をつけてください。
乳がんと女性ホルモンの関係
乳がんの発生や増殖には、「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンが深く関わっています。乳がんが増加している背景には、女性の社会進出に伴う晩婚化などで乳腺がエストロゲンにさらされている時間が長くなったことが要因として考えられています。
また、閉経後は、エストロゲンが脂肪細胞で作られるため、閉経後に肥満している女性では、乳がんのリスクが高くなるとも言われています。
しこりチェックによる乳がんの発見
乳がんを早期発見するために、その特徴をよく理解しておくことが大切です。
月に1度、乳房の自己検診をして、乳がんに特徴的な変化がないかチェックする習慣をつけましょう。 月に1度の習慣にしたい、乳房の自己チェック。
日ごろから自分で「見て」「触って」、 いつもの乳房の状態を知っておけば、小さな変化もすぐに発見することができます。
| 乳房を見てチェック! | 乳房に触れてチェック! |
![]() |
![]() |
| 鏡の前でいろいろな姿勢をとって、乳房の変化を確かめます。 ・腕を上下に動かす ・頭の後ろで手を組む ・手を腰に当てて上体をかがませる など |
調べる乳房側の腕を上げ、 もう一方の手で乳頭周辺から円を描くようにして、 指の腹でゆっくり調べます。 ・入浴時、手に石鹸をつけて触れる ・布団の上で仰向けに寝て行う |
自己検診のベストタイミング
閉経前なら月経が始まって1週間後を目安に。 閉経後なら月に1度、覚えやすい日を決めて。

もしも「しこり」が見つかったら

まずは落ち着いてください。 必ずしも「しこり=乳がん」というわけではありません!
しこりが乳がんによるものか、 その他の病気によるものかを見分けるためには、専門的な検査が必要です。 乳房にしこりを発見したら、 必ず専門医の診察を受けるようにしましょう。
乳房の病気のなかでも、しこりができる病気には次のようなものがあります。
| 乳腺線維腺腫(良性のしこり) | 乳腺症(痛みを伴う) | 乳がん(再発の危険!) |
| 思春期から30歳代に多くみられる病気。 2センチ前後のしこりがほとんどですが、3センチを越えることもあります。 次第に小さくなるしこりが多く、がんに変わる心配もないので、手術などで取り除く必要はありません。 | 30~40歳代の女性に多くみられる病気。 乳腺が硬くなったり、のう胞(分泌物がたまった袋)ができたりします。 多くの場合、月経前に痛みを伴います。 とくに治療をする必要はありませんが、痛みが強い場合には薬物療法を行うこともあります。 | 乳がんは主に、乳汁を運ぶ乳管という部分で発生し、長い時間をかけて生命を脅かすがんとなります。 がん細胞が乳管を破って血管やリンパ管に入り込んで体内を 移動し、肺や骨などに別の拠点を作ることを転移といい、治療後に再び目に見えるようになった状態を再発といいます。 しこりが大きければ転移や再発の可能性 が高くなります。 |
注意!3大疾患(乳腺症・乳がん・繊維腺腫)以外にも知っておきたい乳腺の病気はあります。 左図に見られる乳腺炎や乳管内乳頭腫などは乳がんと間違えやすい病気です。
乳腺の病気は3大疾患だけではありません
しこりが見つかるなど乳房に異常を訴えて病院で受診した人の約70%が乳腺の3大疾患と診断されます。 3大疾患のうちで最も多い病気は乳腺症です。 次に多いのが乳がんで全体の20%以上を占め、最近その増加が目だちます。 次に多い繊維腺腫を含め、乳腺の重要な病気です。
乳腺の病気は、それぞれ発症年齢や症状などにちがいあり、その特徴を知っておくことで、かなり区別することができるでしょう。乳がんにかかりやすい条件
乳腺炎
授乳期に起こる赤い腫れ熱を伴うほとんどが授乳期におこり、乳房は赤くはれ、強い痛みが主症状で熱が出ます。 乳腺炎によく似た症状を呈するものに炎症性乳がんとよばれる特殊な乳がんがあります。 授乳期以外の乳腺炎には特に注意が必要です。
乳管内乳頭腫
しこりはないが 分泌液に血が混ざる乳頭からの分泌が主な症状です。 しこりはふれないことが多<、分泌液に血液が混じっている場合はほとんとがこの病気ですが、一部に乳がんが見つかることがあります。
乳がんの正しい知識
がんの原因はまだはっきりとは判っていません。 ゆえにがんを予防する方法は見当たらないというのが現状です。 ですが、がんから生命を守る方法はあります。 それが集団検診、自己検診などによるがんの早期発見です。 幸いなことに、乳がんは体の表面に出来るがんです。 ゆえに自己検診による早期発見がしやすいがんといえます。
日本人女性の乳がん死亡率は欧米女性に比べると比較的少なく、1/4~1/5といわれてきました。 ところが、近年では増加傾向にあることが判り、2000年度の厚生労働省の人口動態統計によると、1970年の約4倍になっています。厚生労働省「人口動態統計」,WHO
日本人女性の主要がん死亡率割合
また女性の主要がんの死亡では乳がんは5位となっています。しかし、乳がんにかかる数(罹患数)については、以前は胃がんに次いで多いといわれてきましたが1994年には胃がんに並び、その後は乳がんの罹患率は胃がんを抜いて女性のがんの第1位になっています。
厚生労働省「人口動態統計」
がんは発見が早ければ早いほど、治る率が高く、早期の乳がんでは90%以上治すことが可能です。 わが国の乳癌登録別冊医学のあゆみ 乳腺疾患、2004
著:福富隆志(医歯薬出版)
普段の生活で、乳がんにならないようにするにはどうすればいいですか。
こうすれば絶対に乳がんにならない、というライフスタイルは、残念ながらありません。
ただ、食生活に関して言えば、乳がんのリスクを減らせる方法がいくつかあります。 ひとつは、脂肪の多い食事を控えることです。 これによって、リスクファクターのひとつである肥満を防ぐことができます。 欧米に多かった乳がんや大腸がんが日本でも急増している原因として、脂肪の多い食事が増えたことが指摘されています。
日本人が動物性脂肪の多い食事をとるようになった時期と、乳がんや大腸がんが増えた時期がほぼ一致していることからも、それは推測できます。
逆に、日本人は欧米人に比べて大豆イソフラボンが多く含まれる食品を摂っているので、乳がんにかかる率が少ないともいわれています。 大豆イソフラボンは、みそや豆腐、油揚げ、納豆などで多く摂ることができます。
大豆イソフラボンは、体内に入ると、女性ホルモンのエストロゲンと同様の働きをします。
更年期障害を軽減するのにも役立つとされる大豆イソフラボンですが、乳腺に対しては、エストロゲンの刺激を抑える働きがあります。 この働きによって、乳がん発生が抑えられると考えられています。 成人女性が、1日に摂るべき大豆イソフラボンの量は30mg。 納豆なら1パック、豆腐なら1/2丁が目安です。
脂肪の多い食事を控えて、和食中心食生活にすることで、乳がんのリスクをできるだけ減らすように心がけましょう。
乳頭(乳首)からの分泌物は乳がんに関係しますか。
アルコール飲料の摂取は乳がん発症の危険因子になりますか。
少量のアルコール飲料の摂取は乳がん発症の危険因子にはなりませんが、1日平均2杯以上摂取する場合、飲む量が増えれば増えるほど乳がん発症の危険が高まる可能性があります。 飲酒は控えめにしましょう。 ※1杯の基準は、日本酒なら1合、ビールなら中ぐらいのグラスや小さめのジョッキ1杯、ワインならワイングラス1杯などが目安です。
アルコール飲料の摂取が乳がん発生に関係あるエストロゲンに影響を及ぼす可能性のある報告が一部にはありますが、アルコール飲料の摂取がどのようなメカニズムで乳がんの発症に影響を与える可能性があるのかはまだよくわかっていません。 しかし、アルコール飲料の摂取が乳がん発症と関連があるという報告 の方が、関連がないという報告よりもたくさんあります。
日本人を対象にしたごく少数の報告でも関連性を示唆していました。
関連があることを示した報告でも概して1日に1杯程度のアルコール飲料の摂取は危険因子にならないとしています。
日本人を対象とした研究でもまったく飲まない人と時々飲む人との間には差がなかったと報告しています。
日本人の女性においては1日1杯程度の少量の飲酒は乳がん発症の危険因子とはなりませんが、1日2杯以上の飲酒になると飲む量が増えれば増えるほど危険が高まると考えられます。
喫煙は乳がんの発症と関連がありますか。
喫煙と乳がん発症との関連は明らかではありません。 ですが、多くの生活習慣病の発症や肺がんと関連があることが知られています。 健康維持の観点から禁煙を強くお勧めします。
煙草の煙には がんの引き金になる物質や、血管を収縮させる物質など数多くの化学物質が含まれており 喫煙によって肺がん・心臓病など生活習慣病を発症するリスクが高まり、特に肺がんの発症リスクを高めることがよく知られています。 乳がんとの関連を調べた 研究はたくさんありますが、喫煙が乳がん発症リスクを高めるかどうかについては まだ結論は出ていません。
また他人が吸った煙草の煙(副流煙)の害もよく話題になりますが、乳がんとの関連は、弱い関連があるという報告があります。 なるべく他人の煙草の煙は避けた方がよいでしょう。
現在喫煙している人は、今さら禁煙してもしかたがないと思いがちですが 禁煙するとその時点から病気発症のリスクが下がりますので、なるべく早い機会に禁煙することをお勧めします。
日本人の喫煙率は、男性では40年来下がり続け2005年現在約45%となりましたが、女性はこの10数年間は変わらず約14%の喫煙率が報告されています(JT全国喫煙者率調査)。
本人にとっても、まわりの人にとっても禁煙は健康維持に大変役立ちますので禁煙を強くお勧めします。
![]() 〒543-0001 大阪市天王寺区上本町6丁目2-22 山崎製煉ビル2F アクセス方法 TEL 06‐6767‐0621 関西・大阪、大阪府大阪市天王寺区(上本町駅前)の乳腺消化器専門クリニック。 NPO法人マンモグラフィ検診精度管理委員会公認読影医による乳がん検診・乳腺外来・乳腺外科・乳腺科など。 |









